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Skyrim/The Witcher 3 Modについてのあれこれ。FoModの作り方、Mod導入時のトラブル事例などのニッチな話を書いていきます。a.k.a. BowmoreLover@nexusmods

Nexus Modsニュース和訳:ドラゴンの修繕職人 - Qwinnのインタビュー (2019/02/08)

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2019/02/08のNexus Modsニュース Patcher of Dragons - Qwinn(ドラゴンの修繕職人 - Qwinnのインタビュー)の和訳です。聞き手はPickysaurus。


ドラゴンの修繕職人 - Qwinnのインタビュー
元記事:Patcher of Dragons - Qwinn
投稿者:Pickysaurus (コミュニティマネージャー)
投稿日:2019/02/08(UTC)

目次


はじめに

今週は長年のNexus Modsユーザーで、Fallout New VegasやSkyrim Special Edition、Dragon Age: OriginsのMOD制作者でもあるQwinn氏にお話を伺った。

お時間をいただきありがとうございます。毎回恒例ですが、まずは自己紹介をお願いします。

呼んでくれてありがとう! 名前はポール・エスカロナ(Paul Escalona)、そろそろ50歳で、つい先日常に支えてくれる素晴らしい女性ジェリーと結婚したばかりの幸せな男だ。今をさかのぼる1980年のこと、11歳のときにプログラミングを始めた。当時持っていたTRS-80のRAMはなんと4KBで、16KBのゲームプログラムを詰め込もうと努力したものだが、大体はうまくいった。現在の仕事は主にSQLを専門とするデータアナリストで、この手のことには精通している。一日中仕事でプログラミングをして、夜と週末も無料でプログラミングをしている変人だ。主治医は運動した方がいいと言うが、彼に何が分かるっていうんだ?

今プレイしているゲームは?

…モッディングではなくゲームをプレイをするかということかい? ああ… 分かるよ。ずっと前はそうだったさ… でもここ数年は、自分のMODやパッチのテストで必要に迫られてプレイする以外は全くない。以前Fallout New Vegasプレイしたときに最後までクリアできなかったので、最後までプレイしたいものだね。次にプレイしたいのはDivinity 2 Original Sinだ。すごく面白そうだから。

9年前にNexus Modsと出会ったきっかけを覚えていますか?

Fallout 3のMODだった。18ヶ月ほど前にSkyrim Special Editionをプレイするまで、FIXパック(もちろん自作の修正パッチを含む)以外のMODを使ったことのある唯一のゲームだった。
※:FIXパック=バグ修正パッチ的な意味合い

あなたがMODをアップロードし始めたのは最近のことですが、モッダーからMOD制作者に変わったきっかけは?

ああ、それは勘違いだよ。Nexusが存在するよりも(僕がその存在に気づくよりも)前からMODをアップロードしていたし、他人の作ったMODを使うずっと以前からMODを作っていた。最初に制作したMODセットは2008年のPlanescape: Torment用のもので、Spellhold Studiosというインフィニティ・エンジンゲーム用のMODサイトで公開していた。そのサイトは今も存在していて、僕のPS:T用MODはこちらにある。メインのFIXパックは元々"Qwinn's Planescape: Torment Ultimate WeiDU Fixpack"と呼ばれていて、"Unfinished Business"修復パックと調整パックもあったんだ。ゲームがリリースされて8年後のこと、バルダーズ・ゲートにはMODが山ほどあるのに、PS:TにはMODがほとんどないことに気づいた。PS:Tにはゲーム内コンソールがないので、ゲーム中の変数に何が設定されているのか分からず、その値をすべて推理する必要があるからだと思った。それで挑戦を受けることにしたんだ! 最終的には僕のPS:T FIXパックで何百ものゲームのバグを修正することになり、ついにはオリジナルゲームのデザイナーであるクリス・アベロン(Chris Avellone)とコリン・マコーム(Colin McComb)から当初の意図に関する情報が寄せられた。

2015年頃、インフィニティ・エンジンのゲームの拡張版を再リリースしていたモッダーの設立したBeamdog社がPS:T FIXパックの権利を買い取り、Planescape Torment Enhanced Editionに組み込んで再リリースした。だから再リリース版をプレイしたのであれば、僕の作品をプレイしたということだ。以下の画像にあるとおり、僕は「デザイン・コンサルタント」としてクレジットされている。これはスゴいことだし、ゲーム業界でプロとして評価されたとも言える。そのことがあって、今チャットしたり最近モッディングに使っているモンスターマシンを組み立てるのに十分な報酬を得たんだ。僕はそのマシンを「ミョルニル(Mjolnir)」と呼んでいる。

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あなたの人気MODのひとつ“Qwinn's Ultimate DAO Fixpack”が最近PCゲーマーに取り上げられました。Dragon Age: Originsのためにこうした巨大パッチを制作した経緯を教えてください。

PCゲーマーの記事について教えてくれてありがとう。今の今まで知らなかったよ! Bioware社が公式パッチをリリースするより前に、QUDAOFのバージョン1.0/2.0をリリースしていたんだ。バグ修正の数からいえば、2017年にリリースしたバージョン3.0の3%程度のものだったが、それでも数年前までは大規模/包括的な修正パッチと見なされていた。当時は今は亡きBioware Social Webサイトで公開されていた。

2011年頃に実生活が忙しくなって、数年間モッディングから身を引いていた。2015年にBeamdog社のことがあり、それから2017年1月4日にグーグル検索をしていると、Nexus Forumに旧バージョンの2.0が入手できないか質問する投稿があるのを見つけたんだ(2016/10の投稿だった)。それにいたく感動して、6~7年の休止期間を経て再開することに決めたんだ(もしかしたらBiowareがこれに気づいて2回目のチャンスが巡ってくるかもしれない。ミョルニルにはRyzen Threadripperのアップグレードが必要だからね!)。バグを数十個見つけようとゲームをプレイして、結局720以上のバグを見つけて修正した(PS:Tでやったのとそう変わらない)。こうして僕が3分の2を見つけたわけだけど、さっき言ったNexusのスレッドで親切な投稿者が残りのバグを教えてくれて、それが3.0用開発のスレッドとなり、3.0のリリースでロックされるまでに122ページもの巨大スレッドへと成長した。3.0をリリースまでの7ヶ月間、とても親切に手助けしてくれて支えて続けてくれた彼らのことはREADMEにクレジットしてある。

あなたの作品で最も有名なものにQUASIPC (Qwinn's Unified Automated Self Installing Patch Compendium)があります。これはSkyrim Special Edition用の巨大パッチ集ですが、これだけの数のパッチをどうやって最新に保っているのですか?

簡単じゃないよ! 更新の可能性があって、更新の要否を判断すべきMODが今のところ50ある。ありがたいことに大抵の場合は更新の必要はないが、更新対象の割合がどうであれ、かなりの作業が必要になる。ちなみに、QUASIPCを作った理由は、PS:TとDA:OのFIXパックを制作した後にSkyrim Special Editionを始めたとき、既にバグ修正パッチがあるのに気づいたからだ (Arthmoor氏のUSSEP)。これほどの数のMODの組み合わせに対応したMOD集は前例がないと思う。もし前例があるなら教えてほしい。

そして僕の「FIXパック」に残された仕事は、MOD間の競合によって起こるバグ修正だけだった。僕はQUASIPCを「究極のFIXパック」と考えていて、バニラゲームのバグだけではなく、モッディング済みゲームの修正を行っている。鎧MODと一緒に使う際のアミュレットの可視性を修復するQUARKのように細かな変更を行うための小MODを作っていくつもりだが、バグ潰しはプログラマーの初恋みたいなものだし、互換パッチはバグ修正に極めて近いものだから、楽しんでいるよ。普通のFIXパックと比べて保守が大変な理由は、更新されることのない公式パッチだけはでなく、更新が続けられている50ものMODが対象になるためだ。とはいえ、これはMODを使う人ならだれでも該当することだし、何万人ものユーザーがそれぞれパッチを作らなくてもいいように、僕の作品を共有しているんだ。

モッディングに使うツールは?

僕の思うに、数あるMODマネージャーの中でもMod Organizer 2に勝るものはない。SSEとFNVのMOD制作では90%がxEdit、5%がCreation Kit/GECK、残りの5%がNIF OptimizerやDDS converterといったその他のツールだ。xEditは素晴らしいツールで、これさえあれば何でもできるね。Dragon AgeではDragon Age Toolsetを、サウンド関係ではAudacityとGoldWaveなどを使っている。

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MODを制作しようとしている人たちにに何かヒントやコツはありますか?

一つだけあるが、それには面白い背景があるんだ… 僕の唯一の自慢は、Skyrim Special EditionでESPFEプラグイン(※1)を初めてリリースして普及させたことだ。それまではFallout 4のモッダーが使っていたが、それほど多くなかったし、SSEでは皆無だった。ESPFEは僕の言い方では「ESLフラグ付きESP」で、これまでSSEが直面していたプラグイン数255制限を打ち破るのに大いに役立つ。

※1: ESPFEとは、プラグインのファイルヘッダーにLightMasterフラグを立てることでESLプラグインに見せかけたESPプラグインのこと。ESLではESPファイルをマスターに指定できないうえ、ESMの直後にロードされるため、MODのパッチ用途には利用できない。一方、ESPFEは通常のESPと同様にESPファイルをマスターに指定でき、マスターとしたMODの後にロードできる。しかもESL用のロード空間0xFEに配置されるため、ESLと同様にプラグイン上限を圧迫しない。

最初にESPFEを使ったのは、9か月前の2018年にリリースした"Qwinn's Magic Featherweight Patches"だった。当時は誰も知らなかった。慎重にテストを重ねたとはいえ、それをサポートするMODマネージャーはMO2しかなかったし、他の何千人もの人々の環境で動かしたときに何が起こるか分からなかったから、リリースするのは危険だと考えた。著名モッダーたちはこのやり方に抵抗していたが、僕は大きな可能性を感じていたし、このことをみんなに認識させて広範なテストを推奨することは僕の評判を危険に晒す価値があると考えた(もちろん危険性について適切な警告をしてのことだ)。そして危険は利益へと変わった。どの環境でも上手く動作し、今では誰もが使っている。だからこのことをすごく誇りに思っているんだ。まあ、こういう背景があったってことだ。

さて、ここでモッダーにヒントを与えておこう。追加レコードを含むESPがどれもすぐさまESPFEに変換できるわけではない。プラグインにxx000FFF以上のFormIDを持つ追加レコードが含まれる場合、まずは"Compacting FormIDs (FormID圧縮)"と呼ばれる手順を踏む必要がある (※2)。FormIDを圧縮してからアップデートしていけば既存のセーブを破壊することはない。追加レコードが2048未満のMODをリリースするつもりなら(上書きレコードは数えない)、ESPFEにすることでロードオーダーを消費しないという素晴らしい利点を得ることができる。FormIDの圧縮は必ず最初のリリース前に行うように。さもないと、圧縮後のFormIDの変更によって、アップデートしたユーザーのセーブデータを破壊することになる。MODの最初のリリースとは後戻りのできないポイントなんだ。FormIDを圧縮する価値のある状況は他にはない。これはMODの利用者と制作者のどちらにも該当することだ。以上だ。

※2:ESL/ESPFEは予約されたロード番号 254(0xFE) の中にまとめてロードされる。ESL毎のレコード数を 2047(0xFFF) に制限することで、最大2048(2047?)個のESLを読み込むことができる仕組みとなっている。このため、ESL/ESPFEにするにはあらかじめFormIDをxx000001~xx000FFFの間に圧縮する必要がある。

コミュニティ内で称賛するモッダーは誰ですか?

かなりいる。xEditの制作という素晴らしい仕事をしたElminsterAU、それにMO2チームの全員。他の制作者の正式リリースよりも彼らの開発中リリースを信頼している。ゲームエンジンデコンパイルしてアセンブラレベルで作業できるモッダーには本当に感心させられる。ずっと前にScientという名前の紳士が僕のPS:T FIXパックに貢献してくれたが、NuukemaersSSE Engine FixesSSE Creation Kit Fixesで同じレベルのことをしている。MOD神であるRoyBatterianFallout 3とNew VegasのGECKで一時期同じことをしていた。僕がプレイしたいと思うゲームでNPCの不気味さをなくしてくれたDracomiesは「不気味の谷の撲滅者」の名に値する。そして僕の作ったFIXパックよりも大きなバグ修正パッチをいくつも制作しているArthmoorにも。僕のFIXパックと同じくらい調整不要なパッチ作りに献身する彼に感謝している。尊敬しているモッダーは他にもたくさんいる。どれも素晴らしい人たちだ。

最後にNexus Modsコミュニティに伝えたいことはありますか?

ありがとう! 僕のMODへの反応はどれも前向きで、多くの人々がそれぞれのやり方で親切にしてくれる。ときどき寄付してもらえることで、僕の努力も報われるというものだ。それほどの金額ではないが、大体ユニークダウンロード2000毎にちょっとした寄付を受け取っている。たとえ少額であっても、彼らの示す自発的な感謝の表現は僕にとって貴重なものなんだ。おっと、そしてドネーションポイントシステムを立ち上げてくれたNexus Modsにも感謝したい。費やした時間と報酬を比較しても仕方ないし比較もできないが、それでもコンテンツをホストする側から制作者に敬意を示してくれるのはありがたい。この狂ったオンライン世界ではそういったことはとにかく稀だからね。

最後に

質問に答えてくれたQwinnに大いなる感謝を。

紹介してほしいMOD制作者やプロジェクトがあれば、BigBizkitまたはPickysaurusまで提案してほしい。

以上


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