Nexus Modsニュース和訳:モッダーからデベロッパーに - TheModernStorytellerの紹介 (2018/7/4)
2018/7/4のNexus Modsニュース Modder to Developer - TheModernStoryteller(モッダーからデベロッパーに - TheModernStorytellerの紹介)の和訳です。Skyrim用MOD "The Forgotten City"の制作者で、独立系ゲーム開発に転身したTheModernStorytellerさんのインタビュー記事です。聞き手はPickysaurus。
モッダーからデベロッパーに - TheModernStorytellerの紹介
元記事:Modder to Developer - TheModernStoryteller
投稿者:Pickysaurus (コミュニティマネージャー)
投稿日:2018/7/4 (UTC)
関連記事:日曜インタビュー - TheModernStoryteller - "The Forgotten City"の制作者 (2017/1/30)
目次
- はじめに
- まず最初に、知らない人のために自己紹介をお願いできますか?
- ゲームを始めたきっかけは?
- 好きなゲームとその理由を教えてください。
- 名前を見れば一目瞭然ですが、あなたは物語を尊重しています。執筆活動にも手を広げていますか? 執筆経験や特筆すべきインスピレーションはありますか?
- モッディングについてですが、Skyrim用MOD "The Forgotten City" はSkyrim/Skyrim SEで最高の評価を受けているクエストMODです。MODの制作にあたって何にインスパイアされましたか?
- ゲームのモッディングから独自ゲームの制作に乗り出し、E3の舞台にまで立てたことについてどう思いますか?
- オーストラリアの開発会社をあまり見ませんが、実際どうなのですか? オーストラリアのゲーム開発業界の先頭に立った気持ちは?
- Skyrim用MODではほとんどがあなたの個人作業でしたが、新ゲームではチーム作業となりました。その点について詳しく教えてください。
- E3で発表された新ゲームはSkyrimで僕たちに語られた物語を再構築したものです。新ゲームではどう差別化しましたか? 新ゲームについて特に言いたいことはありますか?
- Creation KitのMOD制作とUnreal Studioによる本格的なゲーム開発の違いは?
- "The Forgotten City"はUnrealエンジンをベースにしていますが、数ある中からこれを選んだ理由は?
- あなたの足取りをたどることを願うモッダーにアドバイスはありますか?
- "The Forgotten City"ではMODをサポートしますか? そうでない場合、MODをサポートするゲームの開発予定はありますか?
- 世界に向けてこのゲームを公開した今、伝えておきたい将来の計画はありますか?
- 時間を割いていただいて感謝します。このコミュニティからゲーム業界へと旅立つのはいつ見ても素晴らしいことです。2019年の"The Forgotten City"リリースを楽しみに待つとともに、リリース直前に再びお話しできることを楽しみにしています。
はじめに
E3 PCゲーミングショーをチェックしていて、Skyrimで人気のMODと非常に良く似た新ゲームに気づいた人がいるかもしれない。モッディング界隈のベテラン、TheModernStorytellerがゲーム開発の世界に羽ばたき、独自の新ゲーム「The Forgotten City」を発表した。これは彼が制作した同名のSkyrim用MODを元に再構築されたスタンドアロンのゲームだ。ニック(TheModernStoryteller)はE3でのデビュー後に快く時間を取ってくれて、新しいゲームのことやモッダーからプロのゲーム開発者になった経緯を教えてくれた。
まず最初に、知らない人のために自己紹介をお願いできますか?
TheModernStoryTeller: ニックだ。元モッダーで、モッダー名をそのまま引き継いだゲームスタジオModern Storytellerのクリエイティブディレクターを務めている。妻と犬と一緒にオーストラリアに住んでいる。
ゲームを始めたきっかけは?
8歳の頃、4色のモニターと約64KBのRAMを備えた8086の古いPCを貰ったのがきっかけだ。新しいゲームがプレイできなかったので、GW BasicとQ Basicを使ったプログラミングの独学に頼るしかなかった。恐る恐る、誰にもプレイできないようなゲームを作ったが、想像した何かがスクリーン上に現れるスリルは、自分の中の何かに火をつけた。それから弁護士になるための20年間、そのことは棚上げとなっていた。
好きなゲームとその理由を教えてください。
物語主導型のオープンワールドRPGが好きだ。主な理由は没入性とロールプレイの自由さにある。まさにそれが自分のゲームでやろうとしていることで、魅力的で衝撃的な体験へと人々を惹きよせる世界を創ろうとしている。
名前を見れば一目瞭然ですが、あなたは物語を尊重しています。執筆活動にも手を広げていますか? 執筆経験や特筆すべきインスピレーションはありますか?
クリエイティブな執筆活動は顔にパンチを貰うことから始まった。数年前、僕は弁護士として働きながら、いつかクリエイティブ作家になるのを夢見ていた。クリエイティブ作家のクラスに参加して最初の短編小説を書くことになったが、アイデアに行き詰まってしまった。時間を稼ぐために延長を求めるはめになった。そしてある日道を歩いていると、全然知らない人から何の理由もなく顔を殴られた。このことにインスピレーションを得て、僕ではなく彼の視点から短編小説を書いた。この小説にすごい反響があったことで勢いがついた。何とかして頭の中のアイデアの閉塞感を取り除きたかった。小説を書き始めたが、自分の情熱が伝統的な文学ではなくゲームにあると気づき、途中でやめた。その時のアイデアが、小説よりもはるかに優れた媒体であるThe Forgotten Cityに取り入れられた。インタラクティブ要素があるゲームは、物語のための究極の媒体だと信じている。
モッディングについてですが、Skyrim用MOD "The Forgotten City" はSkyrim/Skyrim SEで最高の評価を受けているクエストMODです。MODの制作にあたって何にインスパイアされましたか?
someguy2000のMOD、Bounties Iをプレイしたとき、それ以上とは言わないまでも、根底にあるゲームと同レベルまで良いMODが作れるという啓示を受けた。あれは非常に良く出来ていたし、ゲームに欠けていたものだった。これまでクリエイティブな執筆を楽しんでいたので、自分でやってみることにした。廊下から作り始め、都市へと発展した。「この空っぽの大都市にはちょっとした何かが必要だ…」と考えたのを覚えている。そして3年後、1700時間の作業の後、1200の台詞とオリジナルのオーケストラ曲を備え、複数の時間軸を舞台とした35,000ワードの巧妙な殺人ミステリーに結実した。
ゲームのモッディングから独自ゲームの制作に乗り出し、E3の舞台にまで立てたことについてどう思いますか?
必要は発明の母。プロのゲーム開発者になりたいのは分かっていたが、どうしようもなかった。働きたくてもモッダーを雇う者など誰もいなかったし、自分の国にはゲーム開発の仕事がなかった。だから法律の仕事を中断してスタジオを設立すると、Film Victoriaから助成金を受け取って、経験豊富なチームを雇い、ゲームの見どころのプロトタイプを制作した。今年の初めにGDC(サンフランシスコのゲームデベロッパーカンファレンス)に参加して、PCゲーマーアメリカ版の編集長と出会った(彼はとてもクールな男だ)。彼はゲームとストーリーをとても気に入ってくれて、PCゲーミングショーのステージでのお披露目に招待してくた。そして小規模チームの僕たちは素晴らしいゲームのひしめく中に乗り込み、Unreal E3アワードを受賞したんだ!
オーストラリアの開発会社をあまり見ませんが、実際どうなのですか? オーストラリアのゲーム開発業界の先頭に立った気持ちは?
その通り。オーストラリアに有名なゲームスタジオはない。League of Geeks(Armello)やDefiant (Hand of Fate 1 & 2)といったインディーズのスタジオがわずかにあるだけで、トリプルAクラスのスタジオはない。これはTeam Bondi (L.A. Noire)のような大きなスタジオが世界的金融危機によって一掃されてしまい、地場の産業がまだ回復していないのが主な原因だ。
これは2つの理由で残念なことだ。ゲーム開発を志す者がものづくりを追求するのが非常に困難で、オーストラリア経済は収益性の高い世界的産業に釣り合っていない。明るい面を見ると、僕たちのような小さなスタジオが、地元の素晴らしい才能を摘み取りやすくなるということだ!
Skyrim用MODではほとんどがあなたの個人作業でしたが、新ゲームではチーム作業となりました。その点について詳しく教えてください。
必要に迫られて、作業の大部分を自分で行っているし、不条理にも週に70時間働くこともある。プロデューサー、作家、ゲームデザイナー、レベルデザイナー、キャラクターモデラ―、アニメーター、俳優、ソーシャルメディアマネージャー、採用担当、ビジネス開発、簿記係、社内弁護士、その他諸々を兼任している。フルタイムで働くのは僕だけだが、Film Victoriaからの助成金のおかげで素晴らしい人材を前の仕事から引き抜くことができた。
E3で発表された新ゲームはSkyrimで僕たちに語られた物語を再構築したものです。新ゲームではどう差別化しましたか? 新ゲームについて特に言いたいことはありますか?
ゲームにはコミュニティから寄せられた好みの要素を維持しつつ提案を取り込み、ほぼすべてを改善して、新しい町、再創造されたキャラクター、新鮮でひねりのあるオリジナルの伝承、戦闘と壁登りの仕組み、一新されたオーケストラ曲、プロの声優、独自にモーションキャプチャしたアニメーションなど、多くの新要素を追加する。
公式の宣伝文句はこんな感じだ:
古代ローマ都市の地下深くで、謎めいた法を破ったことにより、26人の探検家が罠にかかって死んだ。そこには過去に戻り自らの運命を変えることのできる――あるいはかれらの死を永遠に目撃できるポータルがある。
幸い希望は残されている。The Forgotten Cityには信じられないほどの自由度がある。プレイヤーは映画「恋はデジャ・ブ」スタイルで時間軸を操作することで、さまざまなイベントを経験することができる。多彩なキャラクターとの会話、道徳的ジレンマの中での厳しい選択、そして並列的な思考によって、さまざまなエンディングを解除できる。
Steamウィッシュリストの追加はこちらから: https://store.steampowered.com/app/874260/The_Forgotten_City/
Creation KitのMOD制作とUnreal Studioによる本格的なゲーム開発の違いは?
モッディングとゲーム開発の違いは、内装工と一から家を建てる建築家の違いに似ている。
大きな違いの一つにNPC作成の難易度がある。ゲーム内にキャラクターを登場させるには、モデリングして、組み込んで(アニメーション用のスケルトンを付ける)、台詞に同期するアニメーションを作り、キャラクターの挙動を自力でプログラムする必要がある。ゲームのトレイラーを見ても分かるように、僕たちはこれらすべてのやり方を把握して、Character CreatorとiCloneという素晴らしいソフトウェアスイートを使って実装した。
"The Forgotten City"はUnrealエンジンをベースにしていますが、数ある中からこれを選んだ理由は?
Unrealは美しいゲーム世界を簡単に創造できる最先端のエンジンだ。これが重要だった理由は、プレイヤーにゲーム世界に浸り、魅了されてもらいたかったからだ。Unityでも相当良いゲームを作ることが可能だが、より難しくなる。CryEngineやLumberyardも検討したが、僕が始めたときにはまだ新しすぎて、Unrealのように十分試されテストされていなかった。
あなたの足取りをたどることを願うモッダーにアドバイスはありますか?
MODやゲームの制作はとても満たされる。だが、インディーゲームの大半は世に出ることなくひっそりと死んでいく。何年もの人生と数十万ドルの金そして賃金を費やすゲーム開発者の悲劇だ。独立して裕福な人物でなければ非常に危険なので、出来る限りリスクを減らす必要がある。以下の質問全部に「はい」と答えられないなら、飛び込むことはお勧めしない。
- ゲーム制作に関わることが何なのか理解しているか? とにかくやりたいと熱望しているか?
- ゲームを作りながら生き残る方法、たとえば貯金や協力的なパートナーがいるか?
- 快活な人柄で、挑戦、挫折、退屈を伴う仕事に対応できるか? (例: 財務の確保、会社設立、簿記、契約管理、知的財産の保護など)
- 強力なネットワーカーか? (仲間、ジャーナリスト、影響力のある人物とのコネクションの形成が得意か?)
- 技術に対する適応力があり、すぐに習熟できるか?
- ゲームのアイデア実際に試して検証し、見事な成功を収めたことがあるか?
すべての答えが「はい」でも危険だが、それでも戦えるチャンスはある。
"The Forgotten City"ではMODをサポートしますか? そうでない場合、MODをサポートするゲームの開発予定はありますか?
元モッダーの自分としては出来る限りモッディングをサポートしたい。実現の難易度、うまく実装してモッダーに良いツールとドキュメントを提供できるだけのリソースがあるかどうかにかかっている。
世界に向けてこのゲームを公開した今、伝えておきたい将来の計画はありますか?
次に語りたいワクワクするようなストーリーのアイデアはあるが、次があるかどうかは最初のゲームの反響にかかっている。商業的に成功したなら、次は感動的なインパクトのある物語主導型のイマージブなゲームになるはずだ。
時間を割いていただいて感謝します。このコミュニティからゲーム業界へと旅立つのはいつ見ても素晴らしいことです。2019年の"The Forgotten City"リリースを楽しみに待つとともに、リリース直前に再びお話しできることを楽しみにしています。
以上