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Skyrim/The Witcher 3 Modについてのあれこれ。FoModの作り方、Mod導入時のトラブル事例などのニッチな話を書いていきます。a.k.a. BowmoreLover@nexusmods

Nexus Modsニュース和訳:Enderal: 2年を経て新DLCをリリース (2018/11/9)

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2018/11/9のNexus Modsニュース Enderal: Two years later, new DLC, and more(Enderal: 2年を経て新DLCをリリース)の和訳です。聞き手はBigBizkit。


Enderal: 2年を経て新DLCをリリース
元記事:Enderal: Two years later, new DLC, and more
投稿者:BigBizkit (コミュニティマネージャー)
投稿日:2018/11/09 (UTC)

目次



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はじめに

約2年前、ドイツのミュンヘンにあるインディースタジオ SureAI より、Enderal - The Shards of Orderという巨大プロジェクトがリリースされた。これはSKyrimをトータルコンバージョンする(完全に置き換える)MODだ。以来、何十万人ものプレイヤーがエルダースクロールシリーズの伝承とは異なる別の冒険に乗り出し、全く新しいEnderal世界の物語を体験してきた。本日はEnderalのプロジェクトリーダーNicolasをお招きして、Steamでの再リリースや新しい Forgotten Stories DLC についてお話を伺った。

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Enderalのリリースから2年が経ち、数十万人のユーザーがその多様な世界を探検して楽しんできました。まだ知らない人のために、Enderalとは何なのか説明していただけますか?

Nicolas: Enderalは、SkyrimとCreation Kitをベースにしてゲームをトータルコンバージョンしたスタンドアロンのゲームだ。60時間以上にも及ぶ心理ホラー風味の暗く成熟した物語と、緑豊かな森林から雪深い山岳地帯、それに熱帯の浜辺まで、広大なゲーム世界を探検できるのが特徴だ。また、ゲームのメカニズムの大半を修正あるいは拡張して、ちょっとしたサバイバル要素などを追加した。

全体的な感触について、多くの人はDragon Ageやスカイリムといったゲームの妥協点だと表現する。僕のその説明が正しいと思う。

トータルコンバージョンという言葉から期待されるように、Enderalはスカイリムとは全く異なります。物語や雰囲気に関する主な相違点は何でしょうか?

さっきも言ったように、スカイリムと比べてEnderalでは物語がはるかに重要な役割を果たしている。感情、真実味のあるキャラクター、深遠なテーマに重きを置き、それをオープンワールドRPGで表現しようと努めた。その結果、広がりが控えめで直線的だが、より感情に訴える物語になったと思う。

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「やってみて覚える」スカイリムスタイルとは異なり、Enderalでは得られた経験値をキャラクターにつぎ込む必要があります。このようにデザインにした理由と、ゲームプレイにおけるスカイリムとの大きな違いは何でしょうか?

「やってみて覚える」スカイリムのシステムを止めた理由の一つは、デザイナーによるプレイヤーキャラクターの進行状況の管理を軽減する取り除くことだった。戦闘、クエスト、短剣によって得られる経験値によって追跡と管理が大いに簡略化され、エンカウンターと挑戦のバランスをうまく取ることができる。Enderalにおける敵の強さがプレイヤーに依存しないことを考慮すると、プレイヤーの進行状況の追跡は非常に重要だ。さらに、僕たちはちょっと古風で、やって覚えるシステムよりもシンプルな経験値システムを好むという理由もあった。

Enderalではまた、スカイリムのスキルベースの能力システムをより古典的なクラスシステムに変更した。そこには9つのクラスがあって、それぞれ複数のスキルのための能力と、スカイリムのシャウトの置き換えとなる活性化能力として、2~3のユニークな「才能」を持っている。たとえば、「レトリック(話術)」と隠密術の組み合わせであるInfiltrator(潜入者)は、静かに敵の背後に転移したり、目つぶしの粉を投げて姿をくらますことができる。さらに多くのゲームプレイ調整と変更があるが、ここでは説明しきれない。ぜひ実際にプレイして確かめてほしい!

スカイリムよりも少し小さいながら、Enderalの世界には密林、ジャングル、砂漠、巨大都市、雪に覆われた山脈といった多様な特徴があります。ざまざまな地域とEnderalの世界の背後にあるデザイン哲学は何でしょうか? お気に入りの地域はありますか?

僕たちの主な目標は、手作りの感じがあって探検したくなる世界を創る事だった。手順通りにゲーム世界を作り出せるとは思わない。それは汎用品に感じられるし、そして何より心がこもっていない。数多くのテストをしながら、できるだけ多くの風景、エンカウンター、環境的な物語を追加して、探検の動機だけでなく成果も与えようとした。

どの地域も大好きだが、自分のお気に入りはEnderarlの中心にある緑豊かな混交針葉樹林のハートランドだ。そこにはオールドスクールな野生があり、何時間も歩き回りたくさせてくれる。

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開発はスカイリムのリリース前に始まりました。つまり、プロジェクトの開始後にスカイリムをプレイされたわけですが、スカイリムのどの側面が際立っていましたか? Enderalで拡張できると考えていましたか?

いい質問だ! ノルド文化という設定に大いなる可能性を感じたし、それが拡張できるとも考えていた。当時、スカイリムの広大で開けたツンドラや巨大な山脈はそれまでのゲームで未体験のものだったし、Enderalでも同様に畏怖の念を感じさせたかった。新しい能力システムやハイペースでダイナミックな戦闘と魔法システムも気に入った。オブリビオンやモロウウィンドの戦闘は楽しいものの、どこかぎこちないと感じていたからね。

Enderalの前にも、トータルコンバージョンに近いMOD、Nehrim: At Fate’s Edgeを手掛けられていました。2つのプロジェクトの開発手順の比較はどうですか? Nehrimの作業で得た教訓は役立ちましたか?

(違いは)大きいが、それほどでもないと思う。意欲的には聞こえないかもしれないが、2003年のSureAI発足以来、エキサイティングで野心的な数々のトータルコンバージョンプロジェクトが大失敗するのを見てきた。主な理由は野心が多すぎるためだった。知る人は少ないが、Nehrimでさえも何度も失敗寸前の危機を乗り越えてきた。あれが完成したのは、コンテンツを大幅にカットしたからに過ぎない。

それと、チームで働くモッダーすべてに関連することだと思うが、非営利のプロジェクト調整においては、計画と考え方を変える必要がある。たとえ意欲的で才能があっても、新しいチームメンバーに重要な作業を任せるべきではないことを学んだ。ほとんどの人にとってモッディングは娯楽であって、プロジェクトを途中で投げ出すことに実質的な影響はない。だからよほどの幸運が限り、常に逃げていく人がいる。彼らにもそれなりの理由があるのだろうが、何も告げずに静かに去って行き、プロジェクトが修羅場になることが多い。

最後に、先ほどの話とも関連することだが、創造性と興奮の雰囲気を常に維持することだ。これはあらゆるモッディングプロジェクトにおける燃料なんだ。プロジェクトで「自分の夢を実現できない」と感じたメンバーが脱落していく可能があるからね。

Enderalで非常に印象的なのは、時にはスカイリム以上に暗いムードと、成熟したテーマに言及した物語です。これらの点と、Enderalのストーリーとクエストを書く際のインスピレーションについて教えていただけますか?

今日において「成熟」の意味にはさまざまな定義があるが、僕にとって特定の話題やゲームの表現方法というよりはむしろ、ゴア表現やセックス表現を少なくすることを意味する。Enderalでは内面的な悪魔と、心理ホラーのひねりを利かせた「諍いという人間の不変な性質」という話題を扱っている。際どい主題に尻込みしているわけではなく、物語で人々の心を捉え、何かを感じさせ、僕たちの直面する話題についても考えさせたいと望んでいる。同時に、真実味と立体感のある個性の形成に多くの努力を払っている。単なるクエスト提供者やプロット装置ではなく、プレイヤーが思い出したり、好きになったり、嫌いになったり、愛しさえするような人物をね。
インスピレーションについて。Enderalのプロットの基礎は、ユングの心理学理論(分析心理学)に大きな影響を受けている。ネタバレしすぎずに説明するのは難しい。もちろん、様々なゲームや書籍、音楽、実生活のイベントからも影響を受けているが、正確に示すのは難しい。

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臨場感あふれる体験の創造に欠かせないのがサウンドと音楽です。Enderalには独自のUIサウンド(レベルアップやクエスト完了など)とサウンドトラックが用意されています。サウンドトラックの作曲とそのインスピレーションについてお話できますか?

(作曲者のMarvin Koppからの回答)

結局、Enderalのサウンドトラックの作曲には4年かかった。物語の暗い側面と希望的側面を表す2つの並列テーマ(“Black Light”と“Towards the Horizon”)から始めた。これら2つのテーマから他の断片が有機的に広がっていった。まずは探索の断片、次に戦闘曲、次にキャラクターのテーマ、特定イベントやシーンの曲といった具合にね。あまり予算はなかったから、バーチャルインストゥルメント(訳注:音楽制作ソフトのVST/ソフトウェア楽器のこと)にライブ録音を織り交ぜた。金のかかるガレージバンド、と言ってもいいだろう。

インスピレーションの大半はストリートとレベルデザインから得た。他に刺激を受けた作曲家はハンス・ジマージェレミー・ソウル、それとTom Twykerだ。

巨大プロジェクトですから、さまざまな理由でEnderalのリリース版からコンテンツを削除する必要があったでしょう。エンジンの限界などの理由で最終リリースから外されたものは何ですか?

リアルタイム戦闘システムだ!

WowみたいにMyradの背中に乗ってEnderal中を旅できるように複雑なスクリプトシステムを開発した。でもエンジンがエリアのロード/アンロードを高速に処理できないので削除せざるを得なかった。

それと、新たなクラス/能力システムのために用意したかったEnderal用のゲーム内メニューがある。スカイリムの素敵な能力メニューを修正しようとしたが、古いスキルツリーを削除する方法を見つけることができず、独自メニューをコーディングしようという試みは時間切れで失敗に終わった。最後に、開発の最初の数ヶ月に作成しようと手を出していたカットシーンがある。可能ではあるが、適当なツールがなければ時間がかかりすぎることが分かったからだ。

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Enderalの開発の着手から10年、リリースから2年が経ちました。振り返るのに十分な期間です。リリースされたEnderalに満足ですか? 開発中の期待と比べてリリース後の評判はどうでしたか?

実を言うと、SureAIの歴史はさらに長い。創設者のJohannesとDennisが手を組んだ2003年からだ。

結局のところ、リリースについては満足している。Enderalはこれまで約200万人にダウンロードされた(ダウンロードの大部分を占める僕たちのWebサイトでの数だ)。その半分がプレイするとしても謙虚な気持ちになるよ。それに人々の共感を得ることができ、以来忠実なファンでいてくれる人たちもいる。ファンアートやファンフィクションから吟遊詩人の歌とオリジナルサントラのカバーまで、たくさんのものがある。さらに、Enderalチームの約半数はフルタイムのゲーム開発者となり、主導的な立場にいる者もいる。

作家としての僕が心を揺さぶられたのは、ストーリーやキャラクターに深く感動した人々からのメールだった。5年も何かに取り組んでいれば自信を失って、「思うほど良くはならない」やら「このプロジェクトはそのうち大惨事になる!」といった自問自答を繰り返すものだ。陳腐な表現だけど、僕としては一部のファンの反応だけで充分報われた。

EnderalあるいはSureAIスタジオのファン両方にとって何が待ち受けているでしょうか。9月の上旬にEnderalのSteamストアページを立ち上げられましたが、これはプレイヤーにとってどういう意味を持つのでしょうか?

まず、これまで以上にEnderalのインストールが簡単になり、ワンクリックだけで済むようになる。それに、専用のディレクトリにインストールされるようになるから、モッディング済のSkyrimを巻き込んでトラブルになることもない。さらに、この手のものが好きな人向けに実績も追加した。

DLC“Forgotten Stories”のアナウンスもされましたね。新しいものと一緒にEnderalリリース時にカットされたコンテンツが含まれていると理解しています。Enderalにおける“Forgotten Stories”の位置づけと、その取り組みの様子について教えていただけますか?

おっしゃる通り、Forgotten Storiesでは時間の都合でカットされた全コンテンツの追加を目指している。そこには2つの非直線的で広がりのあるギルドのクエストラインが2つあり、Golden Sickle、Arkにある商人ギルド、Undercityを支配する謎のカルトRhâlataに参加することができる。また、これまでクエストのなかった地域で発生する約12のサイドクエストや、メインのゲームでなおざりにされていた物語も扱う (Enderalプレイヤーへのヒント: The Veiled Woman)。

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さらには新しいクラス、クラフトシステムの修正と改善(非戦闘スキルもゲームプレイに影響する)、新しい呪文、新しい才能など、ゲームプレイの改善と追加が大量にある。何百ものバグを修正し、パフォーマンスとクラッシュの問題を大幅に改善した。

DLCへの取り組みは刺激的かつ挑戦的だった。さっきも言ったとおり、今やチームの大半がプロのゲーム開発者だから、時間の割り当ては必ずしも簡単ではない。その一方で、Enderalファンがアドオンに期待する体験を作り出すことが活力となり原動力となった。Forgotten Storiesの物語の多くは自分好みに練り込めたと思う。雑多な作業は終わり、残るはより良くする作業だけだ。

EnderalはSkyrim Classic EditionとLegendary Editionで利用可能ですが、Skyrim Special Editionへの移植予定はありますか? Skyrim SEのエンジン改善によってEnderalは恩恵を受けられるのでしょうか?

漠然と考えてはいるが、Forgotten Storiesの最終パッチのリリースまで着手するつもりはない。バニラ用EnderalとSE用Enderalのパッチに同時に取り組む時間がないからだ。恩恵ならグラフィックはもちろん、パフォーマンスにおいても相当あるだろう。当然このことについては考えている。

あなた方はトータルコンバージョンMODのNehrimとEnderalで有名ですが、9月上旬に独自のゲームMad Restaurant Peopleをリリースされましたね。興味のある人に向けて説明していただけますか?

“Mad Restaurant People”は外部コーダーメンバーのDennis Weichとサウンドトラック担当のMarvin Koppによって開発されたゲームだ。基本的にはUnreal Engine 4に慣れるためのちょっとした実験だ。“Mad Restaurant People”で、プレイヤーはどんどん増える客に料理を出すウェイターとなる。時間内に出さないと客は怒りだす。ゲームが進むにつれてネズミ、酔客、火災といった障害が増えていくんだ。

最後になりましたが、Enderal、SureAI、今後のことについてコミュニティに知らせておきたいことはありますか?

まだEnderalを試していない方は、ぜひForgotten Storiesのリリース時に試していただきたい! それと、僕(Nicolas)はEnderalのメインキャラクターの一人Jesparの傭兵時代の冒険を題材としたエピソード形式のスピンオフ小説に取り組んでいる。古代メソポタミアにインスパイアされた熱帯の群島Kilèを舞台に、国一番の富豪が患った奇妙で超自然的な昏睡の謎を解くために雇われたJesperの活躍が語られる。

第1章はForgotten Stories公開時に僕のPatreonページで公開される。後援者にならなくても読めるからね。

最後に

インタビューに答えてくれたSureAIチームのNicolasに大いなる感謝を。

紹介してほしいMOD制作者やプロジェクトがあれば、BigBizkitまたはPickysaurusまで提案してほしい。

以上


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