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Skyrim/The Witcher 3 Modについてのあれこれ。FoModの作り方、Mod導入時のトラブル事例などのニッチな話を書いていきます。a.k.a. BowmoreLover@nexusmods

Nexus Modsニュース和訳:モッダーから開発者に - BaronVonChateauのインタビュー(2018/9/21)

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2018/9/21のNexus Modsニュース Modder to Developer - BaronVonChateau(モッダーから開発者に - BaronVonChateauのインタビュー)の和訳です。聞き手はPickysaurus。

BaronVonChateau氏はFallout New Vegas用MOD "Autumn Leaves"の制作をきっかけにゲーム業界に入り、今は"Edge of Eternity"の開発に携わっているとのこと。このゲームは往年のJRPGをリスペクトしたもので、あの光田康典氏も参加しているそうです。早期アクセスは11/29から(UI/字幕日本語対応)。


モッダーから開発者に - BaronVonChateauのインタビュー
元記事:Modder to Developer - BaronVonChateau
投稿者:Pickysaurus (コミュニティマネージャー)
投稿日:2018/9/21 (UTC)

目次



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はじめに

今日は特別なゲストをお呼びした。モッダーからプロのナラティブ・デザイナー(※)に転身したBaronVonChateauだ。彼はフランスのMidgar Studio社でEdge of Eternityの開発に携わっている。

※ストーリーやシナリオだけではなく、物語の雰囲気、舞台背景、ゲーム内環境といったより広い概念を設計する仕事。

本日はお話しいただきありがとうございます。あな他を知らない人のために少し自己紹介をお願いできますか?

まずはインタビューしてくれてありがとう!

ギョーム・ビア(Guillaume Veer)、フランス在住のベルギー人だ。ナラティブ・デザイナーとして働き始める前は、Nexusで6年ほどモッディングをしていた。最初は小さなMODをいくつか作って腕試しした後、"Autumn Leaves"という大プロジェクトを始めた。これが僕の悲しい貧相なキャリアをナラティブ・デザイナーに変身させるのに十分な担保を与えてくれたんだ。

あなたのモッディングの頂点はFallout New Vegas用のAutumn Leavesのリリースでした。複雑に絡み合った殺人ミステリーは広く受け入れられ、ベゼスダさえもそこから着想を得たかもしれません。振り返ってみて、あのプロジェクトをどう思いますか?

あれは4年にもわたる長い綱渡りだった。声優とベータテスト以外は全部自分でやったから、仕事が満載で制作は大変だった。

振り返ってみると、最初にAutumn Leavesのスコープを適度に設定したのが最良の選択だった(有望な作品を放棄することのないように、他のモッダーにもお願いしたいことだ)。プレイヤーにストーリー全体を楽しんでもらいたかったし、欲張りすぎて体力を無駄にしたくなかったから、Autumn Leavesのスコープを少し小さめにした。つまり、多くの秘密が隠された数世紀前に忘れ去られた図書館という一つの場所に陰謀を閉じ込めた。戦闘やダンジョン、それに面倒な穴埋め的クエストもない。あるのは奇抜な対話と慎重な調査、そして環境によるストーリーテリングだけだ。

プレイヤーに様々な方法でクエストを解決して報酬を得てもらいたかった。そして何より、自己内省的な空間を提供したかった。ナラティブなゲームが特に優れている点の一つに、プレイヤーに選択の結果を見せることで(可能であれば感情との葛藤を生じさせることで)、自身のことをより深く理解させることができることがある。

僕はその側面だけに焦点を当てたかった。スコープを狭く保つことによって、仕事帰りの時間をフルに活用して作品を作り上げることができた(もちろん家族との時間を除いてはね。誰もその時間を無駄にすべきではないよ)。

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こうした分岐するナラティブを創るにあたり、何から着想を得ましたか?

多くのことからだ。

何よりもまず感謝の気持ちがあった。Autumn Leavesを作ろうと決めたとき、僕を育ててくれた数々の素敵なゲーム――プレーンスケープ トーメント、極限脱出 9時間9人9の扉の物語、極限脱出ADV 善人シボウデス、King of Dragon Passなど――の物語に… 報いたいという衝動があった。今度は僕が考える番だと感じたんだ。

でもそれだけではなく、当時のインディーズ界隈やトリプルAゲーム界隈でも、分岐するナラティブが大々的なカムバックを果たしていないという不満もあった。僕はそのジャンルを称賛し、どうにかして「お返し」をしたかった。これも感謝の気持ちからだ。だから創造的エネルギーを蓄えてアイデアに思いをめぐらせたが、何も思いつかなかった。

その後、あるきっかけがあった。当時はまだObsidian Entertainmentで働いていたクリス・アヴァロン(Chris Avellone)インタビューだ。インタビューの中で、彼はモッディングツールを手に入れて何かに取り組んでみよと言い聞かせていた。彼は自分の主張の裏付けとして、プロの立場でMODを制作した人物(確かDave Oshryだった)を引き合いに出していた。それが僕を反対側へと後押ししてくれたんだ。

僕は他のプレイヤーが遊び、楽しんでくれるものを作りたかった。

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Midgar Studioで職を得るのにAutumn Leavesが重要だったと言いましたが、どういう経緯がありましたか?

あれは幸運の連続だったが、ちょっとしたお膳立てもした。これから話すことは自分の場合にはうまくいったが、あくまでも自分の場合であって、みんなにもうまくいくか分からない。Autumn Leaves開発の4年間、僕は広報活動を行った。TumblrTwitterのアカウントを作って自分の作業状況を公開し、ちょっとしたジョークをちりばめた。みんなと交流して自分のMODに関する愉快な投稿分析的な投稿をすることでフォロワーを増やし、認知度を高めた。大したフォロワーの数ではなかったが(約1,400人)、Twitterフォロワー数の多いゲームジャーナリストやTumblr上の著名なFalloutファンの注意を引くことができた。

以上が第1段階だ。

第2段階として、リリースしてからできるだけ多くの人に手を差し伸べた。Games Pressにプレスキットを投稿したり、MODやFalloutに興味を持つジャーナリストにメールを送ったり、コミュニティに顔を出したりした。(「著名な」Tumblrアカウントは本当に役に立つ。一般的に、Tumblrの連中は圧倒的に助けになる)

第3段階は、幸運にもインディーズの(それでも素晴らしい)フランスの雑誌CanardPCにレビューが掲載されたことだった。かなり熱狂的なレビューで、士気が高まるのはもちろん、少し後でとても役立ってくれた。

第3.5段階として、インディーズゲームのイベントを回って、彼らのゲームや僕のMODのことを話し合い、インディーズ界隈の仕組みを学んだ。みんなの周辺にもインディーズゲームのイベントがあるはずだから、行けるなら行くべきだ! 僕はこうしたイベントに参加してSweet Arsenic(ゲーム会社)でちょっとした仕事を得た。

第4段階はリリースのほぼ1年後だった。Gamescomが間近だったのでチケットを購入して、求職可能なスタジオをリストアップしてブースをひとつづつ訪問して、ナラティブ的なものが必要かどうか確かめた。

少し強引なやり方だから、相手が受け入れ難いようなら無理をしないこと。

僕が行ったときはポケットにジョーカーを2つ忍ばせていた。Nexusのみんなから寄せられた肯定的なコメントのページと、フランスの雑誌CanardPCの記事のプリントアウトだ。ゲーム業界ではどういったものであれプレイヤーの反応や意見が最重要なんだ。

この2つを使ってMidgar's StudioのCEO、ジェレミー(Jeremy)の関心を引き、彼のお眼鏡に叶ったわけだ。作品実績が1つしかないのに採用してくれてよかったよ。こうして僕は採用され、ナラティブ・デザイナーとして働くことになった。

僕はフリーランスだから他のスタジオでもちょっとした仕事をしていたが、要点はこうだ。一度始めれば、留まるのは簡単になる。

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あなたが今取り組んでいるゲーム Edge of Eternity について教えてください。

ああ、Edge of Eternityだね。もちろんさ!

Edge of Eternityは広大なオープンワールドを舞台とした素晴らしいナラティブを持つエピックアドベンチャーだ。へクス/ターン制ベースの、なめらかで素早い戦術戦闘が特徴だ。音楽にはクロノトリガーゼノギアスなどの音楽を手掛けた作曲家の光田康典が携わっている。

これは'90年代のターン制JRPGへのラブレターだが、当時の定番のやり方にはあまり固執しすぎていない。あまり熟成されなかったとはいえ、あの偉大なジャンルを創り出したことに僕たちは敬意を表している。それに、あのジャンルをより豊かにするようなものも追加した。

その一つにネクサスグリッドがある。ネクサスは地形の統一を意味する。それには敵の集団、英雄、危機、ボーナスといったすべての要素が含まれている。既存のスキル――伝統的なJRPGによくある元素呪文や癒し――に加えて、Edge of Eternityに登場するキャラクターたちはグリッドシステムを扱い活用する独自のスキルを持っている。

ネクサスに地雷を置くキャラクターもいれば、それが爆発する瞬間に、罠のかけられたネクサスに向かって敵を押し込んだり、捉えたり、投げたり、足止めしたり、引き寄せたりするキャラクターもいる。

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プロジェクトへの僕の貢献度合いはこうだ(非契約イメージ)

この背景にあるのは、プレイヤーに新しい遊びや可能性を与えることだ。伝統的なJRPGの大半では、ボスと対決できるようになるまでの強さになるまでの単調作業が与えられる。このゲームでは珍しいクリスタルを使って武器をカスタマイズしたり、特別なスキルセットを解放したり、環境を駆使して敵に勝利することができる。

最後の一例として、フィールドマップから戦闘画面へのシームレスな遷移があげられる。たとえばマップ上に地雷原がある場合、敵を魅了して地雷原におびき寄せるようなこともできる。

サイドクエストや予定されたエンカウンターにも同様の考え方があって、クエストの結末や報酬、さらには環境そのものに影響を与えることもある。

ナラティブ・デザイナーとして、ゲーム開発工程にどういった貢献が求められますか?

僕はライターとナラティブ・デザイナーを兼任していて、「ゲーム内に描かれたすべてのものの聖守護者」に任命されている。伝承(ゲーム内で見える/見えないにかかわらず)はもちろん、対話、クエストデザイン、全体のシナリオ、キャラクターに関する一連のストーリー、環境的なストーリーテリングも含まれる。基本的には言葉が含まれるもの全てだ。

だからといってサンダーファーザー・マウンテンの頂上にいる全能の作家だと言うつもりはなく、実際には全く逆だ。何と言ってもビデオゲームビデオゲームだ。プレイヤー体験にとってゲームプレイが最重要だから、何よりもプレイヤー体験とゲームプレイを大切にして、スタジオのみんなと一緒に取り組んでいる。

僕が信頼を置く人物にゲームデザイナーがいる。僕はよく彼にクエストの原稿を送って、ゲームの枠組みの中でどれが動作してどれが動作しないのかについてのコメントを待ち、それからクエストを正しく書き直す。どのクエストもゲーム自身を適切に参照するよう考える必要がある。もしゲームプレイの核心を利用しないクエストがあるなら、多分それは良いクエストではない。

これは作曲家(シーンとBGMが連動できるか)、アニメーター、3Dアーティストなどに問い合わせたときにも起こることだ。問題が起こったら会議を手配して、大抵の場合はすぐに解決する。場合によってはゲームプレイやレベルデザインに収まらなくて仕事を破棄することもある。そんな感じで進めるんだ。

筋書きの一貫性が脅かされない限り。レベルデザイン全体を変更するよりも話を書き直す方がはるかに簡単だ。

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Edge of EternityがMODをサポートするとは素晴らしいです。モッダーを支援するためにSDKもリリースされていますね。EoEにおけるモッディングについて詳しく教えてください。

ゲーム開発に使っているツールの大半をセットにして"The Eternal Forge"という名前でリリースするつもりだ。それはUnity(拡張版)とRPG MakerとベゼスダのCreation Kitをミックスしたようなものだ。

ゲームであらゆることが可能になる。

  • エンティティモデル、武器、オーディオ、特殊効果のアセット交換
  • Edge of Eternityのデータベース(NPC、アイテム、呪文、クエスト、対話、イベント等)の作成と更新
  • Unityのマルチシーンシステムを使った新しいマップの作成(加えてNPC、イベント、カットシーン、対話、クエスト、報酬等の追加)
  • ゲーム開始地点をカスタムマップに変更、新NPC等を使った全く異なるストーリーの作成
  • C#のコードでゲームを無制限に拡張できる(コンピュータに危険を与えうる重要関数に制限を設ける以外は無制限)

もしEdge of Eternityの中身を全部捨てて、まったく別の世界、独自の設定、ストーリー、キャラクター、フォロワー、アイテムを追加したいなら… それが可能だ。

実は、興味のある人のためにNexus Forumにトピックを立てておいた。

どんなMODを期待していますか?

純粋な個人の視点で言うと、作り手にとって極めて個人的なMODを見てみたい。だれもがある種の強迫観念や好みのテーマ、その人にしかできない何かを持っていると思う。

誰もが自分の傾向、好み、ビジョンを持って成長するものだ。僕はしばしばオリジナルゲーム体験の延長としてではなく、「他人の世界」をアクセスするためにMODをプレイする。

これまで僕はモッディングを紹介状と見なしてきた。クエスト、ダンジョン、家MODを創る人たちは基本的に他のプレイヤーを自宅に招待しているんだ。「これが僕の見方、僕の好みだよ」ってね。まるで別の次元や別の宇宙に行くみたいなものだ。ちょっと魅力的だよね。僕はたくさんMODを入れたモロウウィンドをプレイしたときに初めてこの感覚を味わった。最初は規範を尊重していないのが不満だったが、やがて他人の世界を訪問することにとても興味を持ち始めたんだ。

Edge of Eternityでも同様のものを期待している。ヘリオン(Heryon)にそれぞれのやり方で家を建ててくれるのが楽しみだし、きっと予想外のやり方で作ってくれるはずさ。

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ビデオゲーム業界を目指すモッダーに何かアドバイスはありますか?

実はたくさんある。この件については既にModern Storytellerが良識的な回答をしているから(彼のインタビューを読むことをお勧めする)、重複しない回答をしよう。

  • 冷静であれ。何年もくだらない仕事をしていても、ゲーム開発職に必要な成長と経験はいくらか得られるかもしれない。他人との調整について学ぶのはとても重要だし、ゲーム開発者に必要なものだ。僕の場合はある仕事でExcelの使い方を学んだが、それなしにはAutumn Leavesは作れなかった。
  • モッディングをするときは異なるものに取り組んでみること。ナラティブ・デザイナーにおいてレベルデザインゲームデザインの考え方が大いに役立った。というのも、日々の他の開発者とのやり取りに役立つからだ。ゲーム開発とは共同作業だから、お互いの状況の理解が不可欠だ。
  • 必須ではないが、できる限りベースゲームの世界に沿ったMODを制作することはうまい手だ。音楽/モデル/建築/新アイテムに関係なく、アーティストが既存の世界と調和できるということは、クリエイティブディレクターの用意した方向性に沿って作業できる証拠だ。これはとても重要で、既にプロとしてやっていけるという根拠でもある。ナラティブ・デザイナーにとって、規範に合うようにものを書き、すべてが世界と一貫するようにできるということは、プロフェッショナルへの切符となる。(例:干ばつに悩まされる世界に公共プールをたくさん置くな、など)
  • 人に見せられるポートフォリオ(実績)はとても重要だ。ビジュアルアーティストや作曲家なら比較的簡単だが、それ以外の場合は少し難しいかもしれない。僕の場合、あちこちのフォーラムからAutumn Leavesに関する肯定的なコメントを集めた。
  • 挑発的なものであれ、曖昧なものであれ、フィードバックに耳を傾けること。全員を満足させる必要はないが、君のゲームやMODについて感じたことを説明する人たちはおおむね信頼できる。自分のビジョンにこだわるときと過ちを認めるときを学ぶことで、長期的な進歩が得られる。

君の助けとなる最後のものに、Nexusといったコミュニティがある。Youtubeチュートリアルを公開したり、フォーラムで質問に答えるNexusの人たちがいなければ、今日の自分はなかっただろう。だから彼らを大いに称賛する。僕がここまで来るのを助けてくれた多くの人々を称賛する。

それにNexusに対しても。

最後に

2018/11/29にはSteamでEdge of Eternityの早期アクセスが始まる。

時間を割いてくれたBaronVonChateauに大いなる感謝を。

紹介してほしいMOD制作者やプロジェクトがあれば、BigBizkitまたはPickysaurusまで提案してほしい。

以上


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